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『地球温暖化についての小泉首相への緊急提言』

元東大先端科学技術センター研究員 野矢テツヲ

2001.07.03


結論的要約

 過去1世紀間の地球平均気温と大気中炭酸ガス濃度の具体的で詳細な変動経過は、通説とは全く逆に炭酸ガス濃度の上昇は気温変化の原因ではなく、結果である公算が高いことを示している。問題の気温変化の真の原因は、太陽活動の変動に起因する地球雲被覆率変化による太陽からの大気圏内への入射エネルギーの増減である、とする仮説を裏付ける観測データが近年続々と集まっている。
 したがってブッシュ米大統領の“京都議定書は科学的根拠を欠く”という発言は妥当であり、小泉首相がこれに歩み寄り、“アメリカの協力なしに進めるつもりはない”とこれを事実上“葬り去る”――ワシントンポスト紙――態度を両者の会談でとったと伝えられているのが事実であるとすれば、これはクリーン・ヒットどころか逆転満塁場外ホームランとでも言うべき大手柄として高く評価されるべきである。後世の史家は小泉純一郎の名を人類を破局から救った‘歴史の転轍手’(ヘーゲル)として記憶することになるだろう。
 いま必要なことは、日米政府は問題を観測費つきで学界に差し戻し、より信頼できるデータと分析結果が得られる迄は、京都議定書の批准は少なくとも15年は棚上げすることである(太陽活動の周期11年+準備期間3年+データ整理分析期間1年)。

 

第1章 ‘原因’が‘結果’のあとに発生???――京都議定書のはやとちり

第1図
データのオリジナル出所; NASA, GISS (National Aeronotics and Space Administration's Goddard Institute of Space Studies)

 第1図をよく眺めていただきたい。過去約1世紀の間にCO2濃度は290ppmから355ppmまで65ppm増加しており、同時に気温は0.75℃上昇している。京都議定書は、このきわめて大ざっぱな観測データからいきなり短絡的に、CO2濃度上昇が原因となって温度上昇が起こっているのだと断定を行い、今後人工炭酸ガス排出量を削減しなければ気温がどんどん上昇してしまうと主張している。
 ところがこのグラフを多少共詳しく観察すると、この断定と反対の因果関係を見て取ることができる。全期間に起こった温度上昇幅のうち約80%にあたる0.6℃は1940年以前の前半期に達成されており、後半期には残りの上昇幅となる約20%にあたる0.15℃しか上昇していない。ところがCO2の方はこれとは全く対照的に前半期には全上昇幅のうちのわずか22%にしか当たらない14.5ppmしか上昇しておらず、残りの大部分78%にあたる50.5ppmは後半になってから達成されている。
 これらの事実から引き出される最も自然な結論は、問題の1世紀間の気温上昇はCO2濃度の上昇の結果ではなく、逆に原因だった可能性が高いということだ。なぜなら、因果律における結果は原因の後に起こるのであり、その逆ではないからである。ビールを温めると気、すなわちCO2が抜けてしまうのであり、これを防ぐには冷やしておかなければならない、という大人なら誰でも知っている平凡な経験法則がここでもあてはまるはずなのだ。海水中には大量のCO2が溶け込んでいるが、海水温度が上昇すれば、それがどんどん大気中に放出される。もちろんこの増加分が温室効果によって以後の温度上昇の‘お手伝い’を行うが、これは温度上昇の主要因となる全く別の要因の作用にとって副次的補助作用にしか過ぎないと考えるのが妥当である。
 では別の主要な原因は何か? 前世紀末に急速に明らかになったスベンスマーク効果と呼ばれる一連の因果関係の連鎖によって太陽活動が地球温度の変動を基本的に支配しているのである。


第2章 “温暖化予言は劇的破綻に向かう”――太陽風が吹くと気象予報屋コルビンが儲かる!

 一人の天文学者出身の若いベンチャー企業家が、1980年代に英国で気象中期予報情報を販売する会社で大儲けしたという事実は、我が国では全く知られていない。農産物の収穫や衣料、冷暖房機器などの売れ行き等、更に有効需要の主要部分を占めるこれらの消費財市場の変動全体は各年度各季節の気候的変動に鋭敏に支配される。
 したがって、英国でも各部門の経営者達は精度の高い気象中期予報の入手を渇望していたが、英国気象庁の予報はさっぱり当たらず、関連各企業は大損を繰り返してきた。ピアース・コルビンという名の青年が『ウエザー・アクション』なる小さな会社をつくって、気象中期予報情報を提供する商売を始めると、‘ワラにもすがりたい思い’の経営者達がこれを買い始めた。初めは半信半疑だった彼らは結果が出るとびっくり仰天した。まるで魔術のように彼の予報は適中し、経営者達は大きな利益を得たのだ。
 口こみでこれを知った大勢の契約者達が殺到し続け、彼は文字通り巨万の富を得ることになる。当然強い関心を抱いたジャーナリストやプロの気象学者が彼を追い回し、魔術の‘種明かし’を迫った。だが彼はこれは‘商業機密’だ、として法外なパテント料をふっかけて事実上拒否したという。
 彼の‘商業機密’の具体的内容は、これとは別に90年代に入ってデンマークのアカデミシャン達――E.フリス・クリステンセンやH.スベンスマーク、K.ラッセン――の研究発表によって次第に明らかとなっていった。
 地球は常時ほぼ半分を雲に覆われている。雲は一方で太陽から主として可視光線の形をとってやってくる熱エネルギーのかなりの部分を宇宙空間に反射する冷却効果、すなわちいわば‘日傘効果’と、下からやってきて赤外線の形で宇宙空間に逃げ出してしまおうとする熱エネルギーをとらえてそれを妨害する保温効果、すなわちいわば‘ふとん効果’を他方では持っている。前者の方が後者よりも大きいので、地球の熱エネルギー総合収支の視点からみると、雲が増えると冷却され、減ると暖められる結果となる。
 このような雲の効果は極めて大きく、わずか1ないし2%の全地球雲被覆率(クラウド・カバー・レイシオ)が増大しただけで今世紀中に起こると主張されているCO2による温度上昇を帳消しにしてしまうばかりでなく、大幅な寒冷化をももたらし得る。更に雲の増加は大気中の水蒸気の減少を招くが、水蒸気はCO2以上の温室効果をもつため、その減少は一層の気温低下をもたらす。

第2図
* H.Svensmark & E. Friis-Christensen が1997年に“Journal of Atomospheric and Terrestrial Physics”誌上で公表したグラフ.
* 宇宙線データのオリジナル出所は Climax, Colorado.
雲被覆率データのオリジナル出所は ISCCP (International Satellite Cloud Climatolgy Project)
*同上データの直接出所は “The Manic Sun; Nigel Calder, 1997; Pilkington Press”

第3図
各年度の気温の変化と宇宙線の関係.左側のメモリが気温の変化、右側が宇宙線の強度を示している.
* 温度データのオリジナル出所はIPCC( Intergovernmental Panel on Climate Change)
 宇宙線データのオリジナル出所は Climax, Colorad.
* 同上データの直接出所は前掲の “The Manic Sun”

第4図
太線が中性子線、細線が太陽黒点数.逆相関係が示されている.
データのオリジナル出所はシカゴ大学の J. A. Simpson

 問題の雲の形成を支配する第一の要因は、水蒸気を水滴や氷粒に凝結させる際にその核となる微粒子の量である。さまざまな由来による各種の空中微粒子のうち、決定的役割を果たしているのは、銀河系宇宙線であることは観測によって確認されている。第2図の太線は雲被覆率を示し、細線は宇宙線の強さを示している。ご覧のように両者は極めて高い相関関係にある(一方が増えると他方も増える。逆は逆)。
 このような雲被覆率と宇宙線の密接な量的変動関係を媒介として、地球気温が宇宙線の強さの変化にしたがって変動する強い傾向があることも観測データによって立証されている。第3図がこれを示している。
 銀河系宇宙線の強さと、太陽活動の変動がかなり強い逆相関係(一方が増えると他方が減る。逆は逆)にあることは第4図に示されている太陽黒点数(細線)と中性子線(太線、宇宙線全体の強さを代表する)の変動の観測データのグラフを比較すればわかる。
 太陽活動と銀河系宇宙線、銀河系宇宙線と雲被覆率、銀河系宇宙線と地球気温それぞれの変動の間に存在しているこのような密接な関係から、当然のことながら太陽活動と地球温度の変動にもかなり密接な関係があると推測されるが、この推測があたっていることを第5図が示している。
 以上の観測データに基づいて考察すると、太陽活動の変動と地球気温の変化の間には次のような因果関係の連鎖が存在しているという仮説が極めて高い信憑性をもっていると結論づけて差し支えないであろう。
 太陽活動の変動の直接的結果として、まず太陽風の強さが変動し、その影響で地球大気内に突入する銀河系宇宙線の強さが変動する。これによって雲被覆率の変化が引き起こされ、その結果地球温度が上昇もしくは下降する。これはスベンスマーク効果と呼ばれている。

第5図
データおよびグラフのオリジナル出所は E. Friis-Christensen & K. Lassen が “Science”Vol.254で1991年に発表した“Graph of Solor Warning”

第6図
横軸が西暦、縦軸が放射性炭素量の変化.
* データのオリジナル出所は J. Kleins が1980年 “Radiocarbon”誌上で発表した “Graph of radiocarbon wiggles”

 米国から世界外交上のイニシャティブを奪う野心と、ウインズケール白血病の言い抜け口実欲しさからのってきたサッチャー首相と組んで、世界を京都議定書への道に引き込んだ張本人は、英国気象庁長官J.ハウトンである。
 彼はその著‘Global Warming’(1994年刊)で、“太陽が、炭酸ガスのここ10年間の増加分より大きな効果をもつなどということはあり得ない”と断定している。これは彼が、太陽の明るさの変動、すなわち太陽から可視光線などの形で直接地球に送達される熱エネルギーの10年間の変動幅だけしか考慮に入れていなかったからに他ならない。
 スベンスマーク効果については、これより前にIPCC(気候変化に関する政府間パネル)のデンマーク正式代表だったフリス-クリステンセンが、研究課題に含めるよう勧告していたにもかかわらず、ハウトンはこの著書の中でこれをまったく無視したばかりでなく、今日までこの奇怪な態度を変えていない。

 アカデミシャン達に一歩先んじてこの連鎖を発見した天才的気象予報屋は1996年に次のように述べている。
“今や太陽に駆動される温暖化過程は終わりに近づいているように見える。したがって温室効果予言は益々足を速めて劇的な破綻に向かって突っ込みつつある”
 彼のこの展望の根拠のひとつは、第6図に示されている太陽活動の過去1000年間にわたる期間に発生した長期的な変化経過の痕跡が、約2世紀周期のサイクルを示していることから、前世紀の活動低下局面に基づく温暖化過程が、活動上昇局面に急激にとってかわられ、寒冷化局面に移行する劇的転換が迫っているという予測にあると推定される。これは樹木の年輪のなかに残されている放射性炭素量から検出されたデータに基づくものであり、その振幅は40%にも達していることも見て取れる。
 これは太陽活動の大幅な変動によって銀河系宇宙線の強さが支配され、その結果大気中の放射性炭素の生成量が大きく変動することの結果である。このグラフの示す放射性炭素量のいくつかのピークは、太陽活動の低下の結果なのだが、それは同時に小氷河期などと呼ばれる寒冷期の出現周期と一致している。
 いずれにせよ素人のはずの商人に遅れをとったプロの科学者達は、京都議定書のような科学行政の世界的規模の“暴走”を許した自分達の無能と不見識に気づいて責任を痛感し、常識的には学界のタブーである政治的活動を開始している。特に米国では『アンチ温暖化署名請願』に2万人を越える科学者や知識人がサインをし、“京都議定書の批准を拒否するよう勧告した”。
 この人々の中には2388名以上の物理学、地球物理学、気候学、気象学、海洋学、環境学者が含まれており、彼らを中心に16800名の基礎科学と応用科学諸分野の科学者が署名している。そのうち3分の2はPhDなどの高い学位保持者である。
 ブッシュ政権が京都議定書批准拒否に踏み切った一因はこの請願の影響であったことは明らかである。
 この請願運動の趣旨説明論文と署名者全員の名簿など具体的資料は下記のURLにアクセスすれば見ることができる。

http://www.sitewave.net/PPROJECT/pproject.htm


第3章 ‘処方箋’は批准の凍結と15年間の強力な観測活動――富士山頂雲レーダーと宇宙線測定成層圏飛行船団、雲量観測衛星システム、太陽地球第1ラグランジュ点太陽風観測衛星、全地球観測地点網と、定点観測船団、観測ブイ網を用いた大気各層、海面と海水各層の組織的、継続的観測などと、それらから得られたデータの総合的分析によるスベンスマーク効果仮説の徹底的分析

 ブッシュの京都議定書批准拒否は前章で紹介したような、かなり説得力のあるハードな科学的根拠とこれに基づく20000名の科学者、有識者の署名に立脚したものである以上、単なるCO2排出量の妥協的調整や達成期限の延期などの‘玉虫色’の条件交渉が成功する見込みは極めて少ない。
 議長国としての責任ある処理方法は、論理的に批准の凍結と観測研究態勢の飛躍的強化によるスベンスマーク効果の吟味の線で関係諸国を説得する以外にない。
 副題に掲げた観測分析システムの具体的な説明は、かなり専門的問題に立ち入る必要もあるばかりでなく相当の紙数も要することでもあるので、ここでは省略する。しかし、要望があればなるべく平明でわかりやすい解説をほどこした報告書を作成し、小泉首相宛送付する所存である。
 筆者の自宅直通電話番号は次の通りである。

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――以上――


 


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