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『NMDに関する田中外相の見解(1)』
──アーミテージ書簡をめぐる論争を評す──

元東大先端科学技術センター研究員 野矢テツヲ

2001.06.03


結論的要約

 現在、日本政府は米政府のミサイル防衛システム(NMD)計画を検討する方針に対し、“理解を示す”態度を取っているが、これは我が国の国益を損なう恐れのある重大な誤りであり、即時態度を転換すべきである。なぜなら以下20項にわたって述べる具体的理由から、今後この計画を米国が推し進める場合、第1に米と中・ロブロックのいずれかの側の全面核先制攻撃を誘発する公算があり、第2に中・ロ・米のみならず、英・仏は勿論、北朝鮮、インド、パキスタン、中近東諸国などをも巻き込んだ、激しく大規模な核軍拡競争が引き起こされ、その結果、第3に我が国は未曾有の世界的国際緊張の中に引き入れられるばかりでなく、意図に反して核戦争そのものの戦場となる恐れがあるからである。

 したがって、田中外相が個人的にこれに関して反対の意見を抱いているのは当然のことであり、さらに伝えられているように、機会を捉えた私的、公的発言の形で各国外相にこの見解を披瀝したとされているのが事実であるとすれば、これは内外の世論の喚起を狙った賢明な政治的マヌーバーとして、極めて適切な言動として高く評価されるべきである。

 これに対して、一部の外務省在職者にとっては規律違反を意味する意図的機密漏洩による一連の反田中メディア・キャンベーンの責任者達は、大臣室を不法占拠して田中外相を“恫喝”したばかりでなく、外相の了解もなく、また当然附けられてしかるべき進退伺いの提出も伴うことなしに、見解の相違その他について“直訴”ないし“越訴”を敢てしたと伝えられる飯村豊官房長、川島裕事務次官と共に、これらが事実であるとすれば即時閣議にかけた上、罷免にされてしかるべきである。

 なぜならば、彼らは、機密費の組織的責任に関して解明の強い意志を持っているばかりでなく、自民党鈴木宗男代議士のサハリン石油利権操作の道具とするため行った外務省人事入れ替えの現場責任者としての彼らの責任(これについては外務省出身の達増拓也自由党代議士がテレビで公然と指摘している)追求まで行いかねない“伏魔殿”浄化提唱者である田中外相に対する“抵抗勢力”の中心的存在であり、しかもアーミテージ米国務省副長官がもたらしたNMD関係情報を専門担当部局である防衛庁に6月1日現在で全く伝えない(中谷防衛庁長官のテレビインタビュー証言)という信じることが極めて困難な縄張り根性的秘密主義の責任者であり、このような国民の生死に関わる重大問題についての政府部内での綿密な再検討と意志疎通の第一の妨害者だからである。

 彼らはまた、三菱重工業を中心とする8社からなるSDI(戦略防衛構想:NMDの前身)とその不可欠の“部品”であるTMD(西太平洋地域ミサイル防衛構想)受注準備グループと利権的に密着している北米1課や、このグループの宣伝機関の役割を果たしている産経新聞を先頭とする各メディアなどが協同して展開している田中外相追い落としキャンペーンの首謀者と目されるからである。
 小泉首相が“田中外相に部内改革はあせらずゆっくり行い、当面はよく勉強して本務である外交に専念してほしいと指示した”と語ったと伝えられているのが事実であるとすれば、彼を“ねずみ男に似ている”と評したビートたけしの発言は決して根拠のない誹謗中傷の類ではなく、全く的を射た把握であることは明かである。

 6月末の訪米を前にして、ブッシュとの会談における主要議題となると予想されるNMD問題に関して、事実上のサボタージュを行っている川島次官等を居座らせたまま、防衛庁や首相自身の手元にアーミテージ=NMD関係情報を速やかにすべて引き渡すよう“協力を要請する”だけでは、百年河清を保つに等しい先延ばしとなることは明かである。
 その代わり即刻事務次官、官房長その他外務省トップのみならず北米1課長など関係部局の責任者すべてをクリーンな若手官僚と入れ替えるという緊急避難的非常手段に訴えることを閣議で決定執行した上で、洗濯した新たな新世代の幹部の自発的協力によってのみ、始めて実現され得るNMD関係情報の政府内部の関係する全部局への引き渡しを前提とした意見交換と検討によって、問題点と疑問を洗いざらい拾い出し、ブッシュ大統領に提示すべきである。

 外相以上に“勉強”することが必要なのは首相自身であり、国技館での万雷の拍手を浴びて幕内取り組み全部をゆっくり観戦したり、3時間以上の上演時間のオペラを楽しんだりする閑があれば、寸刻を惜しんでNMD関係資料に眼を通したり、中谷防衛庁長官や田中外相と意見を交わしたり、軍事に明るいジャーナリスト達の意見を聴取したりして、ブッシュ会談に備えるのが首相の“本務”であるはずだ。
 必要とあらば会談を1カ月以上繰り延べるべきである。これは他方で“簡単には理解しないぞ”というゼスチャーと米側は受け取り、真剣に我が方の疑問に答えさせる効果を持つであろう。

 アーミテージと会わなかった田中外相の行動がこのような効果を持ったことは、筑紫哲也の口を借りるまでもなかった。そして素直な疑問点について度々放言や失言を公然と行うというマヌーバー戦術も田中外相から大いに学ぶべきであり、“閣僚の発言は慎重に”などという福田官房長官の公式声明などは公然と叱りとばしてしかるべきである。

 これらは、結局協力するにいたる場合でも、少なくともこれをできるだけ高く売りつけるための外交的定石であることを首相は“勉強”すべきなのだ。
 小泉首相がこれらを全くせずに単なる“協力して研究を続ける”という空語に等しいリップ・サービスだけを携えて米国くんだりまで出向いていき、ひたすら米側の主張を一方的にうけたまわることに終始するならば、折角“生命がけで”正論に基づく疑問を半ば公然と提起した田中外相に対して、“屋根に上げておいて梯子をはずす”に等しい裏切り的“不作為”の責任を問われることになるのは明かだ。

 なんとなれば、田中外相はキャリアもあり、親中・反米の傾向を持っていたことは組閣前に広く知られていた。にもかかわらず彼女をこの傾向が発露する可能性がある外相に任命した以上、事態の責任を首相も共に負い、“あらゆる抵抗勢力”を叩き潰しながら、NMDを“理解する”立場の真剣な再検討を行いつつ彼女を全力をあげて支援し、外務省高級官僚の強い抵抗を逆手にとって彼等の罷免を断行する義務を負っているからだ。

 いわんやこれより前、総裁戦への立候補を躊躇していた小泉首相を叱咤し、高人気に基づく極めて効果的な応援演説によってマスメディアと世論の強い支持を獲得、大勝と首相の座へ導いたのは田中女史であったことは、誰の眼にも明かであったのだ。
 しかももし、“抵抗勢力”の眞紀子おろしを小泉首相が防ぎ得ないということにでもなれば、彼のバブル人気は急激にしぼんでしまうのは不可避であり、彼自身にとっても外務省高級官僚との対決は文字通り喰うか喰われるかの真剣勝負なのである。


第1章 核先制攻撃を防ぐことは不可能

(1)問題の本質は、まず第1に、ミサイル防衛システムが100%の効率を確実に達成することは事実上不可能であることにある。99%確実に達成することすら膨大な資金と資材、極めて多数の優秀な素質と高い教育水準、高度の練度を有しているばかりでなく、第1級の堅固な志気を持つ戦闘員を投入、配備し得た場合ですら非常に困難なのだ。
 しかもこの水準が仮に達成されたとしても、数百発以上の熱核弾頭を相手側の本土にまで運搬できる兵力を持つ相手(中国は現在既にこれを保有しており、米国がNMDの作戦配備を完了する10年以上あとの時点までには、もう1桁あがると考えなければならない。ロシアは現時点で既に数千発の水準を保有している)から先制攻撃を受けた場合、かなり重大な損害ないしは壊滅的打撃を受ける公算がある。

(2)第2に、先制攻撃を企図した側が相手側の国内の目標地点で核爆発を引き起こす手段は、単にミサイルや長距離爆撃機だけに限られていないという、極めてやっかいな問題があるという事実を無視するわけにはいかない。
 すなわち、キロトン級の原爆を仕込んだアタッシュケースやリュックを携え、平凡な市民を装った破壊工作員、メガトン級の水爆を搭載した乗用車やトラック、遊覧船に偽装した特攻艇、大型旅客機、ビジネス用小型ジェット機やスポーツ飛行用セスナ、レシプロエンジン単発機、地下鉄車輌や貨物列車はもとより、長距離特急列車すら熱核弾頭搬入ないし輸送手段となり得るのだ。

(3)第3に、先制攻撃を決意した側はよく訓練され、必要な装備をもった少人数の特殊部隊数十隊を秘密裡に相手国内に送り込み、数十基の原子力発電所を、ミサイル攻撃にタイミングを合わせ同時に一斉に破壊するという奥の手がある。
 米国は2001年現在51基の商業用大型発電炉を稼働させている。このうち半分をこの種の“汚い爆弾”として破壊した場合、セシウム137やストロンチウム90を始めとする各種の致命的高濃度の大量の放射性物質が全土に渡って広範囲に散布されることとなり、ミサイルや爆撃機を全く用いなくても米本土全域にわたる重大な打撃を与え得る。
 米国防省は既に70年代にこの問題に気づき、系統的で徹底的な研究を行った結果、次のような結論に達した。

──現在、米国や日本などで稼働している商業用発電軽水炉は、その原理と構造に精通している専門家のもとによく練り上げられた、具体的で綿密な破壊作業計画を中軸とする襲撃マニュアルに基づき、原寸大の模型を用いた徹底的な訓練を施した十数人からなる破壊工作特殊部隊1隊を、携帯用対戦車ロケットと合計数百キログラムのプラスチック爆弾と高性能火薬及び各自小型自動小銃と弾薬、若干の手榴弾、無線通信機器と無線電話などを装備させ、攻撃を実施するならば、各国の平時の警備諸条件のもとでは、少なくとも1基の数十万キロワット以上の軽水炉に、高い成功率で破局的事故(大量の放射性物質の環境への放出を引き起こす)に導くような致命的打撃を与えることができる。

 このタイプの原子炉は、建前としては多重、多様防護システムで、破局的事故は勿論、重大事故も発生を防げることになっているが、これが真実であるかどうかは別として、日常的平和的条件を前提としたものに過ぎず、意図的攻撃に曝された場合はお手上げであることには議論の余地が全くない。
 すなわち、これらのうちのいくつかを巧みに選んで同時に破壊された場合、反応度制御ないしは冷却失敗事故を引き起こさざるを得ない。
 この研究は、始めは極秘にされていたが、後に民間出版者が商業出版のルートで一般に公表した。同書は破壊すべき具体的箇所の具体的組み合わせに関して、多数の実例を詳細に述べている。
 また、一般向け科学誌『サイエンティフィク・アメリカ』のある号は、米国内の実在の発電炉多数が軍事的攻撃によって意図的に同時に破壊された場合のハザード・マップを掲載した。
 この時期、米政府は旧ソ連政府に対して核戦争が起こった場合でも、相互に原子力発電炉の攻撃だけは差し控える協定の締結を密かに打診したが、にべなく拒絶された、と伝えられた。これは当然のことである。
 なぜなら、当時からすでにこの種の任務専門の特殊部隊多数を編成して猛訓練を行っており、かつ核全面先制攻撃の実行はあり得べき戦闘諸形態の選択肢のうちのひとつである、と旧ソ連戦略家達は考えていたからだ。
 この種の特殊部隊は、朝鮮民主主義人民共和国を含む当時の衛星諸国でも編成されていたことを示すデモンストレーション的発言が、関係者の口から公然と語られている。
 櫻井潤は1993年6月19日の北朝鮮の核拡散防止条約脱退期限を前にして、首相官邸に呼ばれ“テロリスト・グループ”によって原発が致命的破壊を受ける可能性があるかどうかについて尋ねられた、とメディアに語った。
 これより前、朝鮮総連のある幹部は、連合機関紙記者とのインタビューの際、“北朝鮮は核兵器を造っているのではないか?”との質問に対して、“韓国には原子炉が42基(ママ)ある。これらを特殊部隊を用いて破壊すれば核兵器以上の効果があるのだから、わざわざ核兵器を造る必要は我々にはない”と答えている。
 ちなみに当時韓国には4基しかなかった。42基とは当時の日本の保有数だった。

(4)したがって、百歩譲って日本にとってTMDが有効であり必要であったとしても、それ故集団自衛権を法的に確立するため改憲が不可欠であるとしても、原発全廃をTMD配備までに実行しなければ、“頭隠して尻隠さず”の愚行になることは明かだ。
 この滑稽きわまる自家撞着的戦略と思われる政策の親玉は、一方では電力不足問題を解決するために原発増設への方針転換を決定しておきながら、他方でNMDの開発推進をうたいあげるという支離滅裂な政策をとるブッシュであるように見える。
 だがブッシュが中国に対する先制攻撃を明確に企図し、その準備として、中国とロシアの第2撃力(先制攻撃をくぐり抜けて生き残り、現実に反撃に投入できる兵力)の威力を大幅に減殺するための手段としてNMDの開発を推進しているのだとするならば、この政策は論理的に首尾一貫しており、決して滑稽な自家撞着などではない。

 

第2章 NMDの推進が先行側と後行側の先制攻撃を客観的に誘発

(5)中国要人はごく最近、“米国がどうしてもNMD開発をやめないならば、我が国も応じてNMD開発競争に入らざるを得なくなる”と公然と述べた。
 現在のところ、はるかに中国を引き離している米国が、先にNMD作戦配備を完了することになる公算が極めて高いと考えられる。
 しかし、中国も死にもの狂いの努力を続ける結果、これに続いてあまり長期の間をおくことなく、NMDの配備を完了する公算も同様に極めて高い。
 そうなれば、両国の間には相対的に安定したある種の相互手詰まり状態が形成され、先制攻撃の誘因はほとんどなくなってしまう。
 しかし、両国の配備完了時点の間にはさまれた期間は、これとは対照的に極めて不安定な情況が形成される。ここでは先行した側にとって、先制攻撃の実施が極めて魅惑的となるからだ。
 一方で、先行側すなわち米国は、後行側すなわち中国の第2撃力の大部分をNMDによって無力化できるので、少なくとも壊滅的打撃を受ける可能性はほとんどない。
 他方で、米国すなわち先制攻撃側の第1撃力は、中国がまだNMDを配備していない裸の状態にあるが故に、中国にほとんど再起不能の壊滅的打撃を与えることが現実的に可能なのだ。
 しかも、逡巡して空しく時を失えば、後行側がNMDの配備を完了してしまい、魅惑的な絶対的優勢の情況は消え去ってしまうだけではない。両者がNMDを配備した手詰まり状態で対峙している新局面では、相手に対して少しでも優位に立とうとする激烈な核軍拡競争が果てしなく続く、という展望が待ち受けているのだ。
 したがって、先行側すなわち米国は、自分の側がNMDを独占的に配備している問題の過渡的期間が終わらないうちに、先制攻撃の実施に踏み切ろうとする強い誘惑にかられることになる。
 逆にこの見通しが、後行側すなわち中国を、先行側がNMD配備を完了する前に、一か八か状況打開のイニシアティブを握って、米国すなわち先行者に先制攻撃を実施したい衝動に駆り立てないではおかないこととなる。

 

第3章 米国は軍拡競争によって中国の恐るべき水準の成長率を押さえ込もうとしている

(6)旧ソ連は米国のGDPの約半分以下の状況下で、米国とほぼ同規模の軍事支出を行って対抗するという決定的誤りを犯したため経済的破局を招き、ソ連邦そのものの崩壊を引き起こした。
 米国はこの成功経験を、中国に対して再び応用しようとしている。

(7)中国はアメリカの挑発にのらず、軍備の大きさをかつて日本が行ったように、国民経済中の一定比率以下に抑えながら高成長率の維持につとめるならば、遅くとも2030年までに、台湾に関して“王手飛車取り”となる公算が充分存在している。
 したがって中国は、当面約四半世紀の間は隠忍自重してひたすら経済建設につとめ、口ではともかく現実は台湾には手を出さないのが賢明だ。
 というのは、中国は遅くとも2020年までにGDP総額で、2050年までに一人あたりのGDP額で米国に追いつき追い越す公算が高い。
 米国に比肩し得るような軍事力の建設開始は、このGDP総額で米国を追い越してからあとのことにすべきである。

(8)台湾問題が“王手飛車取り”となる時点をNR点(Point of No Return)と呼ぶことにする。NR点とは、具体的には中国が少なくとも対米MAD(Mutual Assured Destruction ;相互壊滅保証)戦略態勢を確立し、決意さえすれば台湾武力侵攻の成功的実施を行い得る、というフリーハンド条件を獲得するに至る時点である。
 この条件を後ろ盾に台湾各派とじっくり冷静な話し合いを続ければ、香港、マカオと同じく熟柿同様容易に台湾を何らかの形態で吸収できることになる。

(9)これに対する米国の対処方法選択肢は次の3つである。

a.台湾を事実上放棄し、中国による何らかの形での吸収を黙認する。
b.大規模で急激な核軍拡競争に中国を引っ張り込み、NR点の到来を遅らせるか、あわよくば旧ソ連と同様に経済崩壊させる。
c.NMD実現後、NR点以前の適切な時点で、中国を挑発するか、トンキン湾型のでっち上げ被攻撃演出謀略を用いて、内外世論を欺瞞し、武力衝突を開始、これを口実に核全面先制攻撃を実施する。

 aはイデオロギー上、また、政治的行きがかり上極めて困難だ。しかし、日本などが仲介して台湾住民と米・中両国政府を双方とも納得させることができる解決策が見つかれば、全く不可能ではないと思われる。
 だが、この選択肢を米国に選ばせるためには、日本がかなり大きな反対給付──たとえば、日本が保有する米国国債の大部分を帳消しにするとか、あるいは亜欧米三大陸連絡複合超広軌高速貨物鉄道および発送電光ファイバー通信国際公社の社債の日本手取り分の大幅譲渡など──を米中両国に支払う“一両三方損”方式をとることが不可欠であろう。
 台湾住民に対しても日本の負担で超広軌鉄道および発送電・通信ネットワークのインフラを無償で建設するなどの手厚い便宜をはかって、“五星紅旗”掲揚義務を買い取らせるなどの実益提供が不可欠である。
 歯に衣着せぬ“下品な表現”をとれば、要するに米中両国と台湾住民の頬を札びらでひっぱたいて相互に妥協させるのである。
 欲深で気位が高く、しかも人口サイズも経済力もずば抜けて巨大な米中両国と、人口サイズは小さいがかなりの経済力を保有している台湾住民の魂を揺さぶるに足る札束の量は、気が遠くなるほど膨大なものであることに疑う余地はない。
 しかし、全面核戦争に巻き込まれ、人口と富の大半を失った上、無数の放射線傷害者をかかえて再建の遙かな路をとぼとぼ歩く悲劇を避けるためとあらば、決して高すぎる対価ではない。
 日本国民が一丸となって、正確な高度成長の路を辿りつつ死に物狂いで今後四半世紀間働き続けるならば、必要な量の札束を積み上げることは決して不可能ではない。


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